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太宰の『人間失格』と一葉の写真。 [学習・うんちく・データ・言葉アレコレ]

年末は楽しい飲み会続きでしたが、12月30日の夜に起き出してから三が日いっぱい、引きこもって在宅仕事を片付けておりました~。
経理作業をしているとき、確定申告用の医療費の明細書に「次葉合計」という言葉が印字されているのを見つけました。現代では「次葉(じよう)」なんて言葉は知らない人のほうが多いと思うので、かつての文学少女(照)もビックリ! 税務署など役所関係では死語になっていないんですねぇ。

これは「次の紙(=次のページ)」という意味で、つまり「次葉合計」とは「2ページ目の合計」ということですが、「葉」は「は」ではなく「よう」と音読みする場合、木の葉とか写真、ハガキ(漢字だと葉書と表記しますね~)など、厚みのないものを数えるときに使う言葉(助数詞)です。
最近では文語にこだわる人が「一葉の写真」などと書くぐらいでしょうかねぇ。明治期の近代小説など戦前までの文章なら一般的に使われていたようで、さまざまな文中に散見されます。

私が写真は「葉」で数えるんだ~と知ったのは、中学生のときに新潮文庫で読んだ太宰 治の『人間失格』(1948年発表)でした。
当時の新潮文庫の太宰の作品カバーは黒と白だけの抽象画風で、どことなく陰鬱な印象のデザイン。

……と思ったら、なんと「アマゾン」に当時の装幀本が出品されていますよ~。私の記憶と違って白地のほうが多いのね。太宰の作品は、この装幀シリーズで買い集めていたのです。
人間失格 (1952年) (新潮文庫〈第443〉)

人間失格 (1952年) (新潮文庫〈第443〉)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1952
  • メディア: 文庫


かの有名な私小説の冒頭は、以下のように始まります。

 私は、その男の写真を三葉、見たことがある。
 一葉は、……(以下略)

「一枚の写真」よりも「一葉の写真」のほうが詩的ですから、散文だけでなく歌詞や絵画、写真、どんなジャンルにせよ、創作意欲が掻き立てられるかも♪
……でも、今の人には「樋口一葉の写真のことですか?」なんて言われそうだわね~(涙)。


●初版本でしょうか?

人間失格 (1948年)

人間失格 (1948年)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1948
  • メディア: -


●作家の直筆で文字組みしたらしい。こんなシリーズが出ているとは知らなかった~。読みづらいと思うけど、少しは売れたのかなぁ?
直筆で読む「人間失格」 (集英社新書 ビジュアル版 11V)

直筆で読む「人間失格」 (集英社新書 ビジュアル版 11V)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/11/14
  • メディア: 新書


現在、購入できる太宰の小説で手元に置きたくなるような装幀は見当たりませんでした……。なんで安易に漫画を使うのかなぁ。『漫画で読む人間失格』とかの表紙ならわかりますよ。最近のテレビドラマでも、やたらと漫画の原作に頼るのと一緒。

易(やす)きに流れれば、文化は廃(すた)れる。

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