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平滑筋肉腫のKさんの闘病記 15:梅澤先生のセカンドオピニオンその2。 [医療・健康&がん関連]

外科医でありながら腫瘍外来で実践している梅澤先生の治療法は、抗がん剤(錠剤)を個々人の病状や体力などに合わせて用量をできるだけ抑えて使いつつ、延命を図ろうというもの。
だから、患者によっては同じ薬でも1日4錠の人もいれば1錠だけの人もいるそうです。現状維持や再発予防のために抗がん剤を何年にもわたって飲み続ける必要があっても、副作用が日常生活に支障の出ない程度であれば、習慣化して過ごせるのではないかという考え方のようです。

そして、この先生は抗がん剤の中でも点滴(注射)で投与するタイプの薬剤は「細胞毒」と呼んで使用しません。
特に古くから使われている抗がん剤のうち、「アルキル化剤」と総称されるタイプはドイツで開発され、第一次世界大戦で使われた毒ガス「マスタードガス」の応用です。代表的なものは「商品名エンドキサン/一般名シクロホスファミド」等。

ただし、ネット上で「抗がん剤は絶対に使うな!」と警告どころか口汚くののしるように書いてあるものには、抗がん剤は全部、毒ガスから作られているなどと勘違いしている無知な記述も非常に多いので、一様に怖がる必要はありません。私は無視します。

標準治療の化学療法では、こういう種類のがんだから、この抗がん剤を使って1週間に1本の点滴を何クールとか、1日何錠ずつ何年間というふうに用量と服用期間が定められます。一人ひとりの実情というものは、ほとんど考慮されません。
だから、標準治療を勧める医療者に聞けば、梅澤先生の方法は「必要十分な用量を使わないのだから推奨できない」と言われることが多いでしょう。

また、標準治療は「エビデンス(科学的根拠)」を最重視するため、とにかく数字(データ)で実績を読み取ろうとします。それも大事なことで説得力もあると思いますが、梅澤先生の治療法を求めるような患者は、標準治療には納得できなかった、あるいは難しい病状などで標準治療に見放されたという人たちが懸命に調べた結果、たどり着いたのだと思うので、一般の医療機関とは違って初発の患者が少ないのではないでしょうか。
だから、単純に標準治療の実績とは比較できないだろうと思うのです。

(以下、先生のコメントは箇条書き)

【抗がん剤】
●抗がん剤は強いも弱いもない。どんな薬も同じ。
●卵巣がんや肺小細胞がんなどには、よく効くのもある。標準量でも当たる確率は8割。
●卵巣がんの場合、手術ではミクロレベルは取り切れない。半年間の抗がん剤治療中はつらいけど、その後の無治療期間が長くなる。
●平滑筋肉腫に使える抗がん剤は非常に少ない。つまり、健康保険の適用範囲も狭いということ。術後の再発予防にも使える薬はない。
●希少がんは患者さんが少ないので、製薬会社は平滑筋肉腫の薬を開発しても儲からないと考えている。
●点滴の抗がん剤は投与している最中はなんともない。その夜か翌日から体調がおかしくなる。すでに体内に注入してしまったら加減できない。細胞毒だと死亡確率が1%はある。抗がん剤は博打(ばくち)のようなもの。お金を失うだけならまだしも、命まで失っては意味がない。
●乳がんなら、うちの患者さんに「ノルバデックス」を10年以上、飲み続けている人もいる。
★ちえ註:「商品名ノルバデックス/一般名タモキシフェン」は私も乳がんの術後に5年近く服用した抗ホルモン剤で、「商品名タスオミン」をはじめ、たくさんの種類のジェネリック(後発品)が出ています。
私が服薬した当時('06年~)は5年間が推奨期間でしたが、最近では10年間の服薬期間が推奨されるようになりました。ただし、「タモキシフェン」も副作用が強く出る人もいます。私が子宮内膜症になったのは、この薬の副作用のせいじゃないかとニラんでいるので、長期間、飲める薬があればいいというものでもなさそうです。

【治験】
●がん専門病院で提案された「イホマイド」も細胞毒。
●治験で用いる新薬「TH-302」は低酸素状態で活性化するもの。従来の細胞毒より副作用は少ないかもしれないが、基本的には細胞毒のアレンジ。
●治験というものはデータだけの話で、目の前の患者に対し、どうするかという視点が欠けている。
★ちえ註:
がん専門病院の腫瘍内科医の説明でも、新薬の「TH-302」は「商品名アドリアシン/一般名ドキソルビシン」と「商品名イホマイド/一般名イホスファミド」系という話でした。「イホスファミド」は「シクロホスファミド」と同じく毒ガス由来の「アルキル化剤」です。

【分子標的薬】
●同じ抗がん剤でも分子標的薬は細胞毒とは認識が違う。
●錠剤の抗がん剤は副作用が少しずつ出てくるので、自分で飲む量が調節できる。体に合う種類と量がわかれば、10年以上、飲んで共存している人もいる。
●手術を受ける前に抗がん剤を使えば、腫瘍が縮小すると、その薬が効くということがわかる。抗がん剤によって“眠っている子どもたち”=微小転移の芽が死滅させられることもある。
●「GIST(ジスト:消化管間質腫瘍)」の患者さんに使う分子標的薬「グリベック」は、元は白血病の薬だが胃の平滑筋肉腫にも用いられるようになった(自由診療)。
●胃の平滑筋肉腫の患者さんで肝転移2~3回の人が通常なら4錠飲むところを1錠にして、10年以上、「グリベック」を飲んでいる。以前はアメリカで買って送ってもらっていた。
●「大塚北口診療所」と同じグループの「東京北部病院」(足立区)に入院中の患者さんが小腸の平滑筋肉腫で肝転移もある。消化器なので「グリベック」が効くと思う。
●肺がんのステージⅢ・Ⅳの患者は(余命が)「12か月」なんて言われるが、うちの患者さんは「36か月以上」の生存者ばかり。細胞毒ではない抗がん剤を服用しているから。
★ちえ註:日本では「商品名グリベック/一般名イマチ二ブ」は慢性骨髄性白血病とGISTに対して承認されています。「グリベック」が効かなくなったGIST患者向けに「商品名スーテント/一般名スニチニブリンゴ酸塩」という新薬も登場しています。

【薬の値段】
●「グリベック」は1日1万円ほど掛かる。標準量は1日4錠なので1錠2,700円×4錠=10,800円。発売当初はもっと高かった。「ゾロ」だと半額ぐらいになるので、1錠1,300円として1日1錠なら1か月4万円ほどで済む。
●薬は発売後10年経つと後発品がソロゾロ出てくるから、後発品のことを「ゾロ品(ひん)」とも言う。
●高額療養費の限度額までは使ったほうがトク。それまで健康保険料を払ってきたんだから、大手を振って使ってやれと考えればいい。

【術後の経過観察】
●Kさんは術後3か月ごとにCT検査を受ける予定だが、もっと検査の頻度を多くしたいと思っても、CT検査が健康保険で認められるのは月に1回。検査の頻度は、その施設の患者数や機械の台数によって決まることが多い。
●次の検査とその次の検査の間が短くなっても情報(検査によるデータ)は多いほうがいい。
●ただし、検査の頻度が多くなると経済的な負担が増える。CT検査は放射線による医療被曝への不安が生じる人もいる。
●乳がんで平成元年に温存手術+放射線療法を受けた患者さんは放射線の二次被曝が2%の予想だったが、
実際には1%もなかった。
★ちえ註:3.11の福島の原発問題を機に医療被曝についても、さまざまな説が取り沙汰されるようになりましたが、不確かな情報に踊らされている人が多い気もします。私もよく理解できていないので再度、調べてみないと…。

【サプリメント】
●免疫力を高めるのにサプリメントを使うのは、別に悪くないけどフトコロを圧迫する。
●精神的な効果は値段と比例するが、効果は値段と比例しない。
●きのこ・海藻・ヨーグルト等で免疫活性は簡単に上がる。でも、がんを抑制するかは全くわかっていない。
●「アガリクス」という商品は仕入れ値1円、売価1万円と言われたもので、暴力団の資金源となっていた。
●月に10万円もサプリを飲んでいる人もいる。何か飲んでいないと気が済まない人とか、家族に飲ませたいという人。
●「AHCC」は前立腺がんの患者を対象に「四国がんセンター」が臨床試験を行った例がある。
★ちえ註:「AHCC(活性化糖類関連化合物)」とは日本で開発されたもので、シイタケ属の担子菌から抽出した
α-グルカンに富むという植物性多糖体の混合物だそうです。「四国国立がんセンター 泌尿器科」が補完代替・補助療法を検証する「厚生労働省がん特別研究班」のプロジェクトの一環として臨床試験を実施。現在、健康食品として販売されていますが、けっこう高価。

【その他のコメント(雑談から)】
●がんは宿っている人間をいじめればいじめるほど元気になる。
●胃がんで肝転移のある場合、切除手術をすることで、ちらばっているがんが活気づくことになる。
●がん治療はキリがない、経済的にも。
●2~3年に1人はナンボでも金を使っていいという患者がいる。金さえ掛ければ治るだろうと、いろんなものに手を出す。スティーブ・ジョブスは、なんで移植に手を出したのか。何億円も掛かっただろうに命を縮めただけ。
●大阪の高橋先生は病理専門、顕微鏡で診る人。どういう薬が効くかを読んでもらうために、今までにも何人か送った。

梅澤先生は自分の患者に対し、「ネットなんて見ないほうがいいよ」とアドバイスをしているそうです。ネット上には余計な情報ばかり膨大にあるので、ほとんどの人は確かな情報を選ぶ眼を持っていないため、ムダな情報に振り回されやすくなるから、ということのようです。
ただし、先生に「今回、伺ったことを整理して私のブログに記事として載せても構わないでしょうか」と尋ねたら、了承していただけました。

私は実際に“梅ちゃん先生”とお会いしたことで、基本的な考え方や人柄に惹かれましたが、それは人それぞれの印象によって異なるものですし、がんの病状は個々人で千差万別ですから、梅澤先生の治療法がオススメ!とも何とも言えません。
乳がんで再発・骨転移した“がん友”Nちゃんは先生を信頼して治療を継続しており、SNSを通して彼女の様子を見るたびに「私より元気で活動的だわ~」と感心するのですが(笑)。

平滑筋肉腫の患者にとっては、自由診療でもOKという人なら手術を受ける前に「グリベック」等の抗がん剤を試して腫瘍が縮小するかどうかを確認してみる、というのはも一つの手かもしれません(縮小しないで副作用だけ強く出るというリスクも含みますが)。近年では標準治療でも行われている方法ですね。

Kさんは基本的に私と同じく「健康保険の範囲で治療法を探す」という経済事情と考えなので、今後、たとえ再発を繰り返すことがあっても「切れるうちは切れるだけ切る」というふうに決心したようです。

これまで、いろんな治療法や医療機関などを調べては検討を重ねてきましたが、結論として「手術」を自分で選択したことで、Kさんも迷いなく年明けの入院が迎えられるのではないでしょうか。

でもまぁ腫瘍と一緒に年を越すのは気分的にイヤなものですよね~。
私は乳がんのときには12月のクリスマス直後に手術して大晦日に退院したので、よくわかる気がします。
でも、私なんて乳がんの治療後になってから、「放射線だけで縮小したかもしれない?」とか「再建を前提にしたら
放射線治療は受けないほうが良かったかも?」等々、いまだに「もっと調べれば良かった」という後悔もあるんですよ。
当時は温存手術が少しずつ増えてきたばかりで、標準治療に「再建」という前提もなかったのですが。

「絶対100%後悔しない治療」なんてありませんが、ここまで調べて検討し尽くせば自分でも納得できるよね、と考えられればOK!だと私は思うんですよね~。

ともあれ、Kさんとは「寒さも厳しくなってきたことだし、くれぐれも風邪を引かないように気をつけましょうね~!」と言い合いました。
熱が出ると手術も延期となっちゃいますからね。体力が低下していると合併症のリスクも高くなります。術後には少しでも早く日常のペースに戻れるように体力をつけておかなくちゃ!
というわけで、矛盾した言い方ですが、入院するにも体調を整えておくことと体力づくりが必要なんですよ~。

[参考サイト]

●「薬物療法(化学療法)」(国立がん研究センターがん対策情報センター)
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy.html
※更新日が「2006年03月15日」とあるので、最新の情報ではないということを念頭に置きながら、基本的なことを学ぶには良いと思います。

●「メルクマニュアル医学百科 家庭版  化学療法」
(Merck & Co., Inc., White house Station,N.J.,U.S.A./MSD)
http://urx2.nu/g6Np
(※短縮URL)

●「グリベックなび」(ノバルティス ファーマ)
http://www.glivec.jp/glivecnavi/

●「スーテント ウェブサイト」(ファイザー)
http://www.sutent.jp/

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