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遺伝性(家族性)乳がん・卵巣がんの「予防切除」と「費用」について考えてみよう。 [医療・健康&がん関連]

乳がん・卵巣がんの罹患数について最新のデータを調べてみました。
私が乳がんの手術を受けた2005年と比較してみましょう。

●「部位別がん罹患数(2005年)」
乳がん… 50,695例
卵巣がん…8,304例

●「部位別がん罹患数(2010年 全国推計値)」
乳がん… 68,071例
卵巣がん…9,918例

●「予測がん罹患数(2014年)」
乳がん… 86,700例
卵巣がん…9,900例

・1年の間に、がんと診断された数。患者の数ではなく、多重(重複)がんは1種類ごとに診断年でカウントします。
・2014年分は予測で、正確な数は数年後の公表となります。
※出典:「がん登録・統計」(国立がん研究センターがん対策情報センター)

他の臓器に比べても乳がんの増え方が
突出しているのが気になりますけど~、
直近の罹患数は1位でも死亡数は5位。
つまり、乳がんに罹っても
長く生きる人も多いというわけです。
卵巣がんは、ここ数年だと横ばいのようですが、
発生する場所が乳がんのように体の表面近くではないので、
早期では発見しにくいという側面もあります。


乳がん・卵巣がんのうち5~10%は
遺伝的な影響が強いと考えられており、
’13年にはアメリカの女優
アンジェリーナ・ジョリー(当時37歳)が、
乳がんの発症の予防を目的として
健康な両方の乳腺を切除し、
乳房再建の手術を受けたことを公表。
世の中に大きな衝撃を与えました。

これは「BRCA1遺伝子」「BRCA2遺伝子」という遺伝子の変異が
乳がんや卵巣がんの発症リスクを高めると言われており、
アンジーも遺伝子検査の結果、
87%というハイリスクの数値が出たため、
予防切除に踏み切ったそうです。
また、将来的には卵巣がんの発生を予防するために
卵巣・卵管の摘出術も受ける予定という報道もありました。
※BRCA=Breast Cancer(乳がん)の略。

それを受けて日本でも
遺伝性(家族性)の乳がん・卵巣がんの発症を恐れて、
検査や手術を希望する女性が少しずつ増えてきました。
しかし、アンジーの主治医も
「すべての女性に正しい選択とは限らない」と明言しており、
また、人体にメスを入れるということは
予想外の合併症や後遺症が発生する場合もあるので、
検査で遺伝子変異が見つかっても
マメに検診しながら経過観察し、
早期発見で対処すればいいのではないか、という考えもあります。


「HBOC(遺伝性の乳がん・卵巣がん)症候群」の
診断のための遺伝子検査は、
健康保険が適用されないので全額が自己負担。
一般に費用は20~30万円と言われています。

アンジーの受けた手術は以下のような内容でした。
乳房の目立たない箇所の皮膚を切開して
「ダブル・マステクトミー(両乳房切除術)」を行い、
組織を広げるために
「ティッシュエキスパンダー(皮膚拡張器)」を挿入し、
生理食塩水を注入して乳房を膨らませる
(ここまでで約8時間)。
3か月後(日本の場合は一般的に半年後ぐらい)、
皮膚が充分にのびたところで
人工乳房(シリコン・インプラント)と入れ替える
「乳房再建術」を実施。

現在、国内で同じ手術を受けると
費用は両側で約150~250万円だそうです。
金額の幅は検査費用も含むかどうかもありますが、
施設によってアレコレと差もあるからでしょう。
これに加えて入院費も必要ですね。

一方の乳房に悪性腫瘍があって
手術をするなら健康保険が使えるのですが、
予防として、もう一方(健康な側)も
一緒に切除・再建したいという場合は、
混合診療が認められていないために
両方の費用が自費となってしまいます。
卵巣・卵管の予防切除を受ける場合も、
保険適用外で100万円ぐらい掛かるそうです。


しかし、忘れていけないのは、
乳房や卵巣・卵管を切除することで
「予防ができた!」と思っても、
ほかの臓器にがんが発生しないという保証は全くないということ。

乳房を切除することで乳がんのリスクは低減できますが、
決してゼロになるわけではなく、
アンジーも依然として5%以下の発がんリスクはあるそうです。
「日本乳癌学会」は予防切除によって
「乳がんによる死亡が減る可能性はあるが、
科学的な根拠はまだ不十分」
という診療指針を発表(’13年6月)。
がんの発生する乳腺を完全には取り切れないし、
卵巣がんに罹るリスクもあるため、
死亡率を下げるまでには至らないという見解です。

卵巣がんは予防切除することで
死亡率も乳がんのリスクも低くなるそうです。
ただし、アンジーには3人の実子がいますが(養子も3人)、
子どものいない人で出産を希望し、妊娠可能な年齢の場合、
予防のために卵巣・卵管を摘出してもいいのでしょうか?
(事前に卵子を凍結保存する方法もありますが)。

また、閉経前の人が卵巣を切除すると、
ホルモンのバランスが崩れ、更年期障害に似た症状が起こります。
その治療のために「卵胞ホルモン」によるホルモン補充療法を
長期にわたって行うと、子宮体がんのリスクが高まり、
それを抑えるために「黄体ホルモン」も補充すると、
乳がんのリスクが高まってしまうという弊害もあるとか。

私の周りでは、乳がんの“がん友”で再建した人が、
自家組織を移植するか
シリコンのインプラントを使うか迷って、
最終的にシリコンを選びました。でも、
「コンクリートみたいに重たく感じる」
「ヒヤッとして冷たい」
「シリコンが半回転してしまった」
などの違和感や問題が生じました。
また入院し、つらい思いをして再手術を受けるのか、
術創も増えるし、新たに費用も嵩(かさ)むし……と悩んでいます。

私なんて単純に
「温存で形が崩れるより再建のほうが良かったなぁ」とか
「術後に放射線を浴びちゃうと、皮膚がのびにくいらしい。
再建できる人は、うらやましいな~」
などと思っていましたが、
私の罹患した9年前は、まだ再建どころか
温存手術が普及し始めた頃でしたし、
いつ、どんな治療法を選んでも何らかのリスクはあるのです。


そして、あえて、さもしい話をしますが~、
アンジェリーナ・ジョリーがブラッド・ピットとの結婚に際し、
取り交わした婚前契約書に記された2人の総資産額は
4億2500万ドル(約455億2281万円)との報道でした。
【内訳】
アンジー :1億8500万ドル(約198億1267万円)
ブラピ  :2億4000万ドル(約257億 268万円)

これだけの資産家ですから、
「アンジーも予防切除したことだし」と
同等に考えるのは間違いではないでしょうか?
彼女は自分の医療に必要とあれば
数億円でも数十億円でも使える人なんですよ。
最先端の非常に難度の高い形成手術だろうと
何回でも何十回でも好きなだけ受けられますし、
アンジー専用の治療ユニットでも開発できるでしょう(笑)。

あらぁ、私の資産はアンジーと変わらないわ~、
という人なら、お好きにどうぞ~♪
と思いますが、
オカネを湯水のごとく使える人ほど
いろんなことが試せるので、
自分の治療方針が定まりにくいということも、ありえます。


いずれにしても、予防切除を検討する場合は、
できる限り信憑性の高い情報を集めた上で
自分にとってのメリットとデメリットを
冷静に見極めることが大切ですよね。
外科医に聞けば予防切除を勧められるでしょうけど、
がんに侵されていない健康な乳房や卵巣を取ってしまう、
ということが精神的ダメージとなる性格の人もいるかもしれません。

情報収集の一環として
16日の記事で紹介したような
シンポジウム等に参加するのもいいでしょうし、
最近では「遺伝相談」「家族性腫瘍相談」
といった外来を設けている医療機関もあるので、
相談に行ってみるのも良いかもしれません。

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[参考サイト]

詳しい説明と再建時や合併症などの写真、費用が載っているので
理解しやすいと思います……が、ショッキングな写真もアリ。
●「乳がんと乳房再建」(ブレストサージャリークリニック)
http://www.iwahira.net/saiken.html

●「『がんサポートWeb』  乳がん 再建の検索結果」(エビデンス社)
http://gansupport.jp/?s=%E4%B9%B3%E3%81%8C%E3%82%93%E3%80%80%E5%86%8D%E5%BB%BA&post_status=all&post_type=article&article_category=
※いろんな関連記事が読めますが、閲覧できるのは途中までで、
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●「臨床ニュース  米国女優、『予防的乳房切除』の影響は?」(m3.com)
https://www.m3.com/open/clinical/news/article/188524/

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