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医療事故:船橋整形外科病院の腰痛手術「XLIF」で女性が死亡。 [医療・健康&がん関連]

腰痛.png昨秋から私の腰痛は悪化の一途をたどり、病名も「腰椎(ようつい)ヘルニア」から「腰椎すべり症」に替わって、整形外科医から「一生、治らない。進行すれば手術」と断言されました(泣)。
おまけに「70歳で確実に骨粗鬆症(こつそ しょうしょう)」ですってよ。年齢まで予測できるの!?(笑)。骨量の増加は20代でストップし、あとは減る一方だとか。今の骨量を維持しないと腰の曲がったオバアになる…。

まぁそこまで長生きできるとも思えませんが、もう手術はイヤだなぁと思いつつ、昨秋から東京近辺の整形外科を調べていました。評判の良い病院の一つに、千葉県の「船橋整形外科病院」という名があり、Webサイトをチラッと覗いたこともありました。
だから、この病院で腰痛手術を受けた女性が、医師のミスで亡くなったと知って驚きました。患者の病名は「腰部脊柱管狭窄症」で、私の「腰椎すべり症」も進行すれば同じ病名がつく場合もあるそうです。

[腰部脊柱管狭窄症(ようぶ せきちゅうかん きょうさくしょう)]
腰の神経が背骨などによって圧迫されることが原因で、腰痛や脚のしびれ、長い距離が歩けなくなる等の症状が出る。

亡くなった患者は千葉県内に住んでいた50代の女性。手術を担当したのは50代の副院長で、新たな手術法である「XLIF(エックス リフ)」の研修を海外で受け、同病院で「XLIF」が行えるのは、その医師だけだったようです。

[XLIF(エックス リフ)]
●「低侵襲腰椎前方椎体間固定術(ていしんしゅう ようつい ぜんぽう ついたいかん こていじゅつ)」「内視鏡下腰椎側方椎体間固定術(ないしきょうか ようつい そくほう ついたいかん こていじゅつ)」ともいう。似た手術法に「OLIF(前方侵入椎体固定術)」というものもある。
●「患者の脇腹(後腹膜腔)の皮膚を切開して直径2~4㎝の穴を開け、内視鏡とX線(レントゲン)透視装置を使って体内を映しながら医療器具を挿入し、損傷している椎間板を取り除いて代わりに人工骨を入れ、「ケージ(=鳥かごの意)」と呼ばれる医療器具で固定することで腰部の神経圧迫を取り除く。
●アメリカで開発された手術法で日本では2013年に承認。従来の切開手術の切開面(5~7cm)より小さく出血量も少なくて済むため、患者の体の負担も軽減できるという。ただし、新しい術式で手術の難易度レベルも高いため、研修を受けて技術を身につけた専門医は少なく、実施している医療機関も少数。
●手術によって起こる恐れのある合併症は、腸管・尿管・血管の損傷。

[医療事故の経緯]
●2015年
10月 病院が「XLIF」用の医療器具を導入し、副院長が治療を開始。
12月 10月から年末までに副院長が計12例の手術を行った。
●2016年
1月14日 副院長と40代の男性医師が「XLIF」による手術を患者2人に行った。午前が男性患者(70代・県内在住)、午後に女性患者(50代・県内在住)。
1月15日 男性患者が吐き気や腹痛などを訴えたため、別の病院へ搬送され、大腸の一部に穴が開いていることが判明(※治療後に回復し、約2か月後に退院)。
1月16日 女性患者の意識が低下し、男性患者が運ばれた病院へ搬送され、大腸の損傷が判明。
1月17日 女性患者が敗血症で死亡。
3月 病院側は院内に事故調査委員会を設置し、原因などを調査。2例とも副院長が誤って医療器具で大腸の一部に穴を開けてしまったとわかった。
5月17日 大内純太郎 院長が院内で記者会見を開き、「患者が死亡したのは手術中のミスが原因だった」と認め、「起きてはいけないことが起きてしまい、女性や遺族には本当に申し訳ない。もう二度と起こしてはいけない。今後は絶対に、このようなことがないよう断言したい。安全性が絶対に担保されない限り、XLIFをやるつもりはない」と謝罪。

病院側が医療ミスと認めるのは、よっぽど逃れられない事態だと認識したのだろうと思いますが、救急搬送で別の病院(たぶん提携先の総合病院)の医師によって大腸損傷がわかったため、隠せない・言い訳できないと判断したのか?
また、患者が亡くなったのは1月中旬なのに事故調を設けたのは3月。さらに、事故について公表・謝罪したのが5月の中旬と、時間が掛かり過ぎだと思うのですが、遺族との和解が決着するまで公表したくなかったとか?
それと、手術当日は副院長が後輩の医師に手技を担当させ、自分はそばで監督していた…という疑いはないのでしょうか(研修を受けていない医師が手術するなんて、あってはならないことなんですが、大病院ではありがちなことだし)。

院長は謝罪したとはいえ、「安全性が担保されない限り、XLIFをやるつもりはない」と発言しました。これって「XLIFはやめない」という宣言ですよね。高価な医療器具を購入したからにはモトを取って、それ以上の売り上げがないと…ということか。
「担保」という言葉は「保証」という意味があります。安全性が保証されるとは何を基準とするのでしょう。

同病院の副院長は2人いますが、医療ミスを起こしたのはどちらなのか、執刀した副院長に対する処分も発表されていません。死亡事故があった後も通常の診察や他の手術は続けているんでしょうか。
[追記(2016.5.31)]
●2件の手術を担当した副院長は「手術中はミスに気付かなかった。手術の傷口を小さくしたり、患者の固定を強化したりと患者によって手技も変えた。いつも通りに無事に終わったと思っていた」と説明。
●この副院長は1月の患者の死亡事故後、「XLIF」以外の手術を行っているという。

マスコミ報道があっても同病院のサイトには事故のことが何も掲載されず、月末になってようやくアップされました。
●当院における医療事故の発生について
http://www.fff.or.jp/seikei/

一般の企業で不祥事が起きた際、一両日のうちに自社サイトで公表するところもあります。いったん信頼を失っても対応が迅速だと、誠実そうなイメージが打ち出せる場合もあるでしょう。事故から日にちが経って公表となると、1月中旬~5月中旬に同病院を受診し、事故のことは知らないまま他の手術を受けた患者がいるかもしれません。亡くなった患者とは別の病名、別の手術法で担当医が違うにしても、ショックを受けたり不安になったりすると思います。

報道があった翌日に自院の説明をサイトに掲載した病院もあります。
●当財団におけるXLIFの現状
http://www.iwai.com/iwai-seikei/oshirase/2016/20160518.php
(稲波脊椎・関節病院、岩井整形外科内科病院/2016年5月18日)
※この病院を推薦するわけではありません(私自身は受診したこともないので)。

事故のあった「船橋整形外科病院」は1989年12月の設立で、病床は70床という規模。「医療法人社団 紺整会」というグループを構成し、船橋市と市川市に系列の7つの医療・介護施設があります。

●船橋整形外科病院
http://www.fff.or.jp/seikei/
・船橋整形外科グループ
http://www.fff.or.jp/

同病院の評判に関しては、真偽は別として以下のようなクチコミを見かけました。
・評判が高く、いつも診察まで3時間ほど待たされる。
・病院ランキングなどの本で紹介されている。
・スーパードクターとして有名な専門医がいる。
・プロのスポーツ選手も治療を受けている。
・ここのお医者さんがテレビに出ていた。
・地元のプロサッカーチームの公式ホスピタル。

院内には「グループ安全対策委員会」を設置。以下の説明文が載っています。
・医療安全対策
http://www.fff.or.jp/seikei/outline/risk/

今 問われている『医療の質』の根幹をなす『安全性』を『人間はエラーをおかす.』という前提に基づき、エラーを誘発しない環境や、起こったエラーを吸収して 事故を未然に防止するシステムを組織全体として取り組んでいます。

……とてもわかりにくい文章ですが、「人は完璧でないから、グループを挙げて医療事故の防止に努める」と言いたいのでしょう。でも、残念なことに委員会は機能していなかったようです。

・医師紹介
http://www.fff.or.jp/seikei/outline/doctors.html
グループの理事長は「日本整形外科学会専門医・指導医」、整形外科病院の院長は「日本整形外科学会専門医・指導医、日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医」、副院長は両名とも「日本整形外科学会専門医・指導医」で、うち1人は「東京女子医科大学 非常勤講師」の肩書もあります。

医療が細分化されている現在、私たち患者は自分の病気の専門医を探そうとします。その目安の一つとなるのが各学会による「指導医」「専門医」などの認定制度なんですが、学会によっては認定試験を設けているところもあれば、会費さえ払えば肩書が付くところもあるので、一概には信用できないのが難しいところ。

もう一つの目安は実績ですが、「船橋整形外科病院」は人工関節の手術が突出して多く、その次がヒザで、脊椎は人工関節の1/3程度。
・手術件数
http://www.fff.or.jp/seikei/outline/operation.html

副院長の1人は股関節の専門、もう一人は専門分野が記載されていないのですが、もし腰椎の専門家ではないなら、なぜその医師の治療を受けたのか?
この病院にはたくさんのお医者さんがいて、「脊椎・脊髄センター」という専門外来もあります。たとえば、私がこの病院を受診するなら、「脊椎・脊髄センター」の中でも腰椎の専門医の診察日を選んで行きますね。でも、手術を勧められたら、他の病院でセカンドオピニオンを取るか、脊椎(腰椎)の手術実績の多い医師を探します。
別の病気で人工関節を検討する疾患の場合、相性の良い先生に出会えて、地元で通いやすいなどメリットが多いなら、この病院のお世話になるかもしれませんが。

病院で医療事故があろうと通院し続ける患者はいます。私が貧血治療で通院している国立病院(新宿区)でも、MRI検査の造影剤の間違いで亡くなった女性患者がいました。でも、私は血液内科の主治医を信頼しているので通い続けています(MRIは検査専門クリニックで受けるようになりましたが)。
また、乳がんの手術を受けた私立の大学病院(新宿区)も、過去には誤診で乳がんではないのに両乳房を切除された人がいますし(ご本人に取材して私のがん本に詳細を記述)、東海地方の病院へ派遣した研修医らが医療ミスを量産(?)した事実もあるのです。
それらは珍しいことではなく、全国の大規模な病院なら毎日「ヒヤリ・ハット」事例が起きていますし、表沙汰になっていないケースもたくさんあるはずです。

医療ミスで死亡した女性のことは、とても痛ましいと思います。ただし、12例しか実績のない医師の手術法を選ぶのは、命を懸けた冒険ではないでしょうか。どんな手術であれ医療事故の恐れはつきまといますが、リスクが高すぎる。担当医が実績を挙げたくて新しい術法を積極的に勧めたのでしょうか。

昔だと外科や整形外科の医師の間では「患者を何人か殺して一人前になるんだよ」という恐ろしい言葉が普通に語られていたと聞きましたし(今もかな?)、私が以前、取材した整形外科医は「オレたちゃ、トンカチとノコギリ使う大工みたいなもんだからさ~」と自嘲気味に笑っていたことを思い出しました。

確かに新しい技術は経験を積まないと上達しませんよね。だからと言って自分が決死の覚悟で実験台になりたくもない。そう思うからこそ、お医者さんや病院を選んだり治療を受けたりする前には、充分に納得がいくまで調べ尽くす必要があると思うのです(具体的なノウハウは私のがん本にも書きました)。

[参考サイト]

●脊椎手術.com(ドットコム)
http://www.sekitsui.com/
(運営:日本ストライカー株式会社)

●XLIF:内視鏡下腰椎側方椎体間固定術(脊椎固定術)
http://www.iwai.com/iwai-seikei/shujutsu/x-lif.php
(岩井整形外科内科病院/東京)

●脊椎・脊髄グループ
http://www.keio-ortho.jp/orthopaedic/group01.html
(慶應義塾大学医学部 整形外科学教室/東京)

●XLIF(エックスリフ)手技による究極の脊椎前方固定術について
http://www.heiwakai.com/spine/operation/xlif.html
(平和病院脊椎外科・横浜脊椎脊髄病センター/横浜)

●腰椎変性側弯症
http://www.hachiya.or.jp/treatment/lumbar/xlif.html
(はちや整形外科病院/名古屋)

●内視鏡下低侵襲脊椎固定術(XLIF)について
http://www.midorigaoka.or.jp/department/xlif.html
(みどりヶ丘病院/大阪)

●半人前の背骨屋さんのブログ(運営:seboneya59さん)
・初体験 〜XLIF〜
http://seboneya-san.com/%E5%88%9D%E4%BD%93%E9%A8%93xlif/
・XLIF で発生した重大事故
http://seboneya-san.com/xlif-%E3%81%A7%E7%99%BA%E7%94%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E9%87%8D%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E6%95%85/

●XLIF 低侵襲腰椎前方固定術 術中動画
https://www.youtube.com/watch?v=66oueZgin-k
(投稿:spine-clinic.jp)
※視聴には年齢制限があるため、ログインが必要。
http://spine-clinic.jp/
(京都脊椎脊髄なんでもクリニック/京都)

※イラスト:(C)みふねたかし(いらすとや)

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