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英国の二つ星シェフとロンドン大学の教授の料理対決♪ [おいしいもの♪ 料理・食材・食文化]

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NHKの「地球ドラマチック」というドキュメンタリー番組で、ロンドンにあるミシュラン二つ星レストランのシェフと、物質科学を専門とするロンドン大学の教授の料理対決を観ました。
料理を科学的見地から捉える番組や読み物は以前からありますけど、この番組はシェフも教授も好感のもてる人たちで、彼らを手伝うレストランのスタッフたちも、みんな楽しそう♪
完成した料理はシェフが評価するので公平ではないのですが、トップクラスのシェフの調理と最先端科学の実験が同時進行で観られるという楽しいドキュメンタリーでした。

●五つ星ホテル「The Berkeley(ザ・バークレー)」でミシュラン二つ星レストランを率いるシェフ
Marcus Wareing(マーカス・ウェアリング)
・シェフの信条「料理は愛や気遣い、経験が必要」「最も気を使うのは風味」「ひらめき」「音をよく聴く」「思いやり」

●ロンドン大学 キングスカレッジ教授、技術・工学科 材料科学研究所 所長、物質材料工学研究者
Prof. Mark Miodownik(マーク・ミオドニック)
・教授の考え方「食べ物も物質には違いない」「研究室の実験機材を駆使して食材の風味を引きだし、誰もが驚くような新しい味を創りだす」

以下は私の記憶に頼った覚え書きなので間違いもあると思いますが~、詳しく知りたい方はネットの動画をご覧ください(このページの下部にURLを載せておきますね)。

● 「トマトのスープ」
シェフ:トマトをざく切りにして炒め、じっくり煮込んで水分を飛ばし、煮詰めて旨みを凝縮。塩・胡椒などで味を調え、スープ皿に盛り、仕上げにオリーブオイルを多めに回しかける。

教授:トマトを刻み、ブレンダ―(バーミックス?)でつぶす。分子レベルまで細かくすることで旨み成分のグルタミン酸が出てくるという。つぶしたトマトをフタ付きの透明なボトル何本かに分けて「遠心分離機」にかける。透明な液体となったトマトエキスと、トマト色のかたまりに分離。混ざらないように濾(こ)して透明な液体だけを軽く温め、スープとして供する。見た目はコンソメスープより薄い色。「高温で熱すると風味がなくなる」というのが教授の意見。

シェフの評価:「トマトの香りはするが、味がない。料理として、もっと工夫が必要」
教授の改良:透明なスープにズッキーニ、にんじなどの茹で野菜の輪切りや色紙切りを浮き実として入れてカラフルに。シェフは「アイデアはいい」と褒めた。

● 「ミディアムレアのステーキ」
シェフ:牛肉に塩・胡椒し、予熱したフライパンで焼く。両面を何度も返して焦げ目がついたら、包丁のみねでつぶしたにんにく、ローズマリーなどの香草、バターをビックリするぐらいたっぷり加える。このハーブバターソースは厚みのある肉の半分が浸るくらいの量で、何度も肉にかけるようにして焼きつける。取り出した肉を金網に上げて、ハーブバターソースを回しかけ、しばらく寝かせておく(味をなじませる)。

教授:塩・胡椒と、ちょっぴりの香草(フェンネル?)でマリネした肉を袋に入れ、真空パックにする。パックごと52度(57度?)の温度で湯せんする。パックから肉を取り出し、水気を拭き取る。肉を「液体窒素」に30秒浸し、表面だけが凍った状態になったら、たっぷりの揚げ油に入れ、全体がこんがりするまで揚げる(←メイラード反応)。

シェフの評価:「熱の通り加減が素晴らしい」と褒めた。ただし、風味はシェフのほうがおいしいとのこと。

ちえの感想:焼かないのなら「ステーキ」という料理名じゃなくなるのでは? 素揚げ肉だよね~。でも、英語の「steak(発音:ステイク)には「焼いたりフライにしたりする牛肉・魚肉の厚い切り身」という意味もあって、語源は北欧のノルド語の「串に刺して焼いた肉」という説も。じゃあ、タタール人の料理が発祥と言われる「タルタルステーキ」の立場はどうなる!? あれは生肉を食べるわけで、それもステーキ? うーんうーん(汗)。いつか調べましょう。

● 「付け合わせのマッシュポテト」
シェフ:じゃがいもを皮付きのまま茹で、熱いうちに皮を剥(む)き、丹念に裏ごししてから、さいの目に切ったバターをたっぷり加えながら練り上げる。白っぽいクリーム状で、シルクのようななめらかさに。

教授:じゃがいもを茹で、粗くつぶしてから袋に入れ、「麦芽酵素」のパウダーを加え、真空パックにして湯せんにかける。この過程で分子レベルまで酵素で分解されるという。出来上がりは黄色みを帯びたピューレ状ながらも、でんぷん質がブドウ糖まで分解されてしまったので、ベタベタ甘くてドロドロの食感となった。

シェフの評価:「(教授の料理は)大事なじゃがいもを5個もムダにした。じゃがいもに謝らないと!」

● デザート「フォンダン・ショコラ(フランス語: fondant au chocolat)」
シェフの部下のパティシエの女性:プロのレシピ通り、刻んだチョコレートを湯せんで溶かしてから型に入れ、冷蔵庫で冷やし固める。卵の白身を泡立て、固くツノを立ててメレンゲを作り(ここは機械任せ)、ふるった粉類に混ぜて全体をさっくりと合わせる。このケーキ生地を小さめの筒状の容器に流し入れ、半量入れたところで固まったチョコレートをのせ、さらにケーキ生地を流して、天板に入れて焼き上げる。一流のパティシエでも失敗しやすいというお菓子で、このパティシエも何個か失敗したが、完成品は高級店のスイーツの味。

教授:市販の安いチョコチップを溶かし、型に入れて冷凍。市販のケーキミックスに「亜酸化窒素(N2O/笑気ガス)」を加えて泡立てる。非常に軽い生地になるという。この生地を紙コップに流し入れ、チョコを間に挟んで生地で覆い、電子レンジで40秒加熱。見た目はシフォンケーキの生地が、さらにフワッフワになった感じ。

シェフの評価:「(教授のデザートは)懐かしい味だ。我々はプロ意識にこだわり過ぎて、手順を難しくし過ぎている」
ちえの感想:笑気ガスって調理に使えるの~!?(驚)。私は昔、歯医者さんの治療で笑気ガスの麻酔を使われたけど、歯の治療が大嫌いだからシアワセな気分にはならなかったな~。

心配なので調べてみました。「亜酸化窒素」は無色のガスで、欧米20か国以上で食品添加物として用いられているそうです。噴(ふ)きつけるタイプの缶入りホイップクリームや植物性オイルを噴霧する商品などに使われているとか。
日本でも人体に影響がないかを調べる、ラットを使った実験の報告がありました。

「亜酸化窒素を添加物として定めることに係る食品健康影響評価に関する審議結果」
(内閣府 食品安全委員会)
https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hyouka-161209-n2oxide.pdf#search=%27%E4%BA%9C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%AA%92%E7%B4%A0%27

結論としては食品添加物として加工品に使う程度は問題ないが、過剰摂取はよくないといった感じ。
歯医者さんで用いる場合は低濃度で安全とのことですが(医療用だから当たり前ですね)、最近では遊びで高濃度の笑気ガスを乱用した死亡者も出たので「危険ドラッグ」として認識されているとか。ひゃ~。薬物乱用はダメ、ゼッタイ!

理数系のアタマのない私としては、やっぱり、ひとすじに修業を重ねて丁寧に調理し、おいしいものを作ることに情熱を傾け、食べる人を幸せにしてくれる料理人のごちそうを選びますね。調理の過程はすべて科学で解説できるのかもしれないけど、そういうことを考えながら食べたいとは思わないし、私には化学式より五感のほうが大事。
でも、調理の過程を知らされずに教授のステーキやデザートが出されたら、「わ~、おいしい♪」とか言って喜んで食べちゃうんでしょうねぇ(笑)。

番組に登場したシェフはロンドンで有名な人のようですが、お料理の評価はさまざまな様子。でも、それはどこの国でも同じですよね。100人いれば100人とも絶賛する料理など、どこにもないのです。だから、料理は難しいし、面白くもあるんですね。


[参考サイト]
●地球ドラマチック「究極の料理対決 ~科学は経験を超えられるか~」
http://www4.nhk.or.jp/dramatic/x/2016-06-25/31/30131/2340442/
(イギリスBBC制作/2016年)

●news系 動画ライブラリ
http://newskei.com/?p=38619
ページの中ほどに番組の動画があります。シェフの顔のアップが表示されている画面の左下の再生ボタン(小さな三角形)をクリックしてください。画面中央の大きな三角印(シェフの顔の鼻のところにある)をクリックすると、別のページへ飛んで会員登録を求められたり何かのソフトの更新を勧められたりするので、必ず左下の小さな再生ボタンをクリックしてください(万一、別のページに飛んでしまった場合は、出てくる表示には従わず、画面全体を閉じること)。そのページ内にある他の広告やイラスト、動画などをクリックして何か不都合が生じても一切、関知いたしません。くれぐれもお気をつけて~。
(※上記サイトはリンク切れとなる場合もあります)。

[本日のオマケ]
●マンガで学ぶ飲食店経営 プロの調理を科学する バックナンバー
http://nr.nikkeibp.co.jp/science/
(石川森彦「日経レストランONLINE」/日経BP社)

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