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ベトナムの素晴らしい伝統芸能「水上人形劇」が面白い♪ [美術・音楽・古典芸能・芝居...etc.]

ベトナムの水上人形劇.JPGXin chào!(シンチャオ!/ベトナム語の挨拶:おはよう・こんにちは・こんばんは)

BGM代わりに流していたテレビの旅番組でチラッと観た瞬間、面白そう!と釘付けになったのが、ベトナムの「水上人形劇」。現地の言葉で「ロイ・ヌオック」または「ムア・ロイ・ヌオック」と呼ばれる伝統芸能だそうです。人形は水面から上に出ているのですが、操る人の姿は見えません。シンクロナイズド・スイミングみたいに水中に潜ってるの!? いえいえ、調べてみると全く違う方法でした。

[ベトナム語メモ]
ムア(Mua):踊る、舞う
ロイ または ゾイ(Roi):人形 ※発音の違いは方言によるものだとか。
ヌオック(Nuoc):水

私は人形浄瑠璃(文楽)のファンで、「結城座」の江戸糸あやつり人形も好きだし、子どもの頃はジュサブロー人形の『新八犬伝』も、『サンダーバード』や『ひょっこりひょうたん島』『プリンプリン物語』とかも夢中で観たなぁ(再放送も含む)。さすがに『チロリン村とくるみの木』は懐かし番組で知りましたけどね~。なぜか人形劇に惹かれるようです。

ベトナムの隣国のカンボジアに伝わる人形芝居は大型の影絵で、これまた素晴らしい芸能でしたが、水上がステージという人形劇があるとは知りませんでした。私の周りにはベトナム旅行へ行った人が多く、中学時代の同窓生は長年、住んでいたそうで、最近も友達の一人が単身赴任していますが、人形劇のことは聞いたことがありません。

さて、どんな特徴があるのでしょう?

[歴史]
おそらく11世紀にはベトナム北部の紅河(ホンハ)デルタ地帯の村々で、農民たちが豊作を祈ったり収穫を祝ったりする祭りや儀式の娯楽として演じられていたという。1121年に建立された石碑には、当時の文化人が李王朝の宮廷で水上人形劇が催された様子を漢文で記したものが残っている。
※紅河デルタ:トンキン湾に注ぐ「紅河」は、かつて「ソンコイ川」と呼ばれた。酸化鉄を含むため水の色が赤い。「デルタ」は河川が多岐に分かれる低湿の三角州のことで、豊かな水が肥沃な土壌を作ったが、洪水などの被害も頻繁だった。

[水上人形劇の起源]
中国の伝統芸能「水傀儡」と同種、もしくは、その流れを汲んだものという説があり、中国での発祥は三国時代の魏(3世紀)あるいは随(6世紀頃)または宋(10世紀頃)と諸説あり。
※水傀儡:「傀儡」は「くぐつ」と読み、操り人形のこと(「かいらい」とも読む)。英語の「パペット(puppet)」やフランス語の「マリオネット(Marionnette)」と同義。中国語ではベトナムの水上人形劇を「越南水傀儡」と記す。「水傀儡」はネット上に「すいくぐつ」「すいかいらい」という読み方はあるが、「みずくぐつ」かもしれず、辞書サイトには見出し語がないので正しい読み方は不明。

[人形の特徴と動き方]
人形は柔らかい材質で軽くて浮きやすいイチジクの木を彫って作る。耐水性が必要なので、漆を塗ってから天然素材の絵の具を重ねる。大きさ30cm~100cm、重さ1kg~5㎏。水上に出る部分と水中に沈める仕掛けの部分とに分かれる。
愛嬌あふれる個性的な顔立ちで、おどけたような速い動きやクルクル回る踊り、水上を優雅に滑るような演技も。魚や鳥などの人形がイキイキと飛び跳ねる様子はリアルな感じ。

[舞台と人形の操作法]
人形は竹など長い竿(さお)の先端に取り付けられ、竿の中を通した紐(ひも)を手元で引いたり回転軸を操作したりすることで頭や胴、両手足が動き、自由に回転させられる。
舞台は伝統的な建物を模したセットに、濁り水のような不透明の水を張ったプール状のもの。人形遣いは正面奥に掛けられた簾(すだれ)の後ろにいて、腰まで水に浸かったまま、舞台中央まで2~3mの距離がある人形を遠隔操作するので、客席からは見えない。素早いテンポで人形を自在に操る技術は圧巻。

[人形劇団]
昔の劇団は村ごとに組合として構成され、人形を操作する技は秘伝として継承されたため、座員は親から子、孫というふうに世襲も多かった。入団するにも厳しい制限があり、一座の秘伝を堅く守ると誓わねばならなかった。現在は女性の演者もいるが、昔は長く泥水に浸かって人形を操るのは体力的に無理と思われていたのと、結婚すると人形遣いの秘伝が夫の家族などへ漏れる恐れがあるとして、女性の入団は認められなかった。

[劇場]
農村などでは村内のパゴダ(お寺)の池や付近の湖などを舞台として屋外で上演された。少人数の劇団では、小さな舞台セットにビニール製プールを池に見立て、音楽テープを流して3体ぐらいの人形で上演することもあるが、海外からの観光客向けには専用シアターである「タンロン水上人形劇場」(ハノイ)や「ゴールデンドラゴン水上人形劇場」(ホーチミン)等での本格的な生演奏による公演が人気。昔ながらの素朴な演目は「ベトナム民族学博物館」(ハノイ)での公演に多い。

[演目]
ベトナムの歴史や伝説、民話などをモチーフにしたものや農村の暮らしを伝えるものなどバラエティ豊か。一回の公演は一話が数分程度の短編ばかり十数話で構成される。大きく水しぶきが上がったり、花火や煙を使ったりする派手な演出も。どの劇団の公演も「テウさん」という名のコミカルな人形の口上から始まる。
・代表作
『レロイ王、ホアンキエム湖の伝説(黎王、剣を返還す)』…15世紀の黎朝の始祖レロイ王は湖に棲む亀から授かった神剣で中国と戦い、ベトナムを解放した。平和な世となった頃に亀が現れ、剣を神へ返せと伝えたので、王は湖に浮かぶ小島で剣を返還したことから、「ホアンキエム湖(還剣湖)」という名が付いたという話。
『凱旋帰郷(故郷に錦を飾る)』…村一番の出世頭が科挙(官吏登用の試験)に合格し、華やかに帰郷する話。

[音楽とセリフ回し]
生演奏による公演の場合は舞台の両側に演奏者が並ぶ。笛、十六絃、打楽器の太鼓や小鑼(しょうら)など伝統楽器の奏者は歌い手も兼ねており、曲目は紅河デルタの民謡や宮廷音楽の影響を受けたもので、にぎやかな調子が多い。現代的なシアターではエレキギターやドラム等も導入。語りや掛け声、セリフの掛け合いの入る演目は、ベトナム語で意味がわからなくても話が単純なので、子どもでも充分に楽しめる。


ベトナムは長く中国に支配され、その後、フランスの植民地となり、第二次世界大戦のときには日本軍も侵攻して食糧を略奪。餓死したベトナムの人々は夥(おびただ)しい数となったそうです。
http://hanoirekishi.web.fc2.com/gashishaireihi.html
大戦の終結後もフランスとのインドシナ戦争、アメリカとのベトナム戦争によって国中が疲弊し、たくさんの犠牲者を出したにもかかわらず、カンボジア・ベトナム戦争、中越戦争と続いたため、ようやく国状が安定したのは1990年代も後半となってからでした。

水上人形劇を守ってきた紅河デルタ地方には重要拠点が多かったため、ベトナム戦争時にはアメリカ軍による北爆で甚大な被害に遭ったのでした。
幾たびもの戦火をくぐり抜け、現在まで生き延びてきた伝統芸能。ベトナム文化省は「水上人形研究所」を設置して保護に努め、海外公演の助成も行っているそうです。

日本にも劇団が来日して何度か上演されたこともあるようですが、またぜひ暑い時季に来てほしいな~。とりあえずはネットにアップされている画像と動画で観劇しましょ♪

[動画]
●Mua roi nuoc nen 1A
https://www.youtube.com/watch?v=vidBssvNz5E
(アップロード:huong hoang)
『テウさんの口上』『簫(しょう)を吹く牛飼い』『田植え』『カエル採り』『アヒル農法とキツネ狩り』『魚捕り』『獅子舞』『不死鳥(鳳凰)の舞』『レロイ王、ホアンキエム湖の伝説』『子どもの水遊び』『ボートレース』『獅子のボール遊び』『仙女の舞』『龍・獅子・鳳凰・亀の共演』

同じ演目の人形が、もっとアップで観られます。
●Mua roi nuoc nen 2A
https://www.youtube.com/watch?v=2LViU1WhXec
(アップロード:huong hoang)

同じ演目で演奏者を中心に映したもの。特に右側手前の太鼓奏者のスティック捌(さば)きと指使いが繊細で見とれました。
●Mua roi nuoc nen 1B
https://www.youtube.com/watch?v=oifjKjLLSzY
(アップロード:huong hoang)

屋外の池での夜の公演。昔はこんな雰囲気で催されたんでしょうね。
●Nhà Hát Múa Rối Việt Nam-Rối Nước
https://www.youtube.com/watch?v=FJuKl7aP_lo
(アップロード:Quang Cóc)

昼間の屋外での上演。プールに葉っぱが浮いてる…。
●Múa rối nước ở Thảo Cầm Viên
https://www.youtube.com/watch?v=7Zpm4J9gS7Q
(アップロード:Phi Bao)

ハノイの「タンロン水上人形劇場」の公演。立派な劇場で、演目も少し異なります。
●Water Puppet Theater in Hanoi - Nhà hát múa rối nước Hà Nội
https://www.youtube.com/watch?v=TIXg3nRa-tc
(アップロード:Hương Trà Shop - Mẹ và bé sau sinh)


[参考サイト]

写真がいっぱい♪
●ベトナムのショー! 水上人形劇について
http://find-travel.jp/article/4467
(Find Travel)

わかりやすい解説♪
●水上人形劇、ベトナムの伝統芸能を楽しむ
http://www.jtb.co.jp/kaigai_guide/report/VN/2014/07/puppet-show.html
(現地レポート:JTBホーチミン支店 PHAM VIET HAI)

旅行者の視点でのレポート♪
●VIETNAMESE WATER PUPPET SHOW 水上人形劇
http://vietnam.navi.com/play/23/
(ベトナムナビ)

現地取材を基にした専門性の高い薀蓄(うんちく)。
●ベトナム水上人形劇
http://www.fl.reitaku-u.ac.jp/~kanamaru/viet_puppet/
(金丸良子研究室/麗澤大学 外国語学部 教授)
・金丸先生のサイトには、中国を中心とする民俗関連の興味深い資料がいろいろ。
http://www.fl.reitaku-u.ac.jp/~kanamaru/

メコン圏6か国の総合情報サイト。
●水人形戯(ムア・ゾイ・ヌオック)
http://www.mekong.ne.jp/directory/culture/muaroinuoc.htm
・メコンプラザ(※2009年9月12日で更新は止まっています~)。
http://www.mekong.ne.jp/

ベトナム北部の歴史や文化、ハノイの史跡名所を紹介。
●知ろうベトナム! 水上人形劇
http://hanoirekishi.web.fc2.com/suijouningyougeki.html
(ハノイ歴史研究会)

※画像:a picture of mine that i took in the puppet theatre in Hanoi, Vietnam/File:Puppettheatre.JPG 出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)/投稿者:user:She

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