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医学書の古典9000冊余がデジタル化、閲覧・DL・転載も可能に。 [学習・うんちく・データ・言葉アレコレ]

京都大学の付属図書館がデジタルアーカイブを構築し、約9000冊もの貴重な医学書の古典を「富士川文庫」で公開し始めたそうです。
文庫の名前の「富士川」とは、和漢洋にわたる医学の史料を京大へ寄贈した富士川 游(ふじかわ・ゆう/1865~1940)にちなむもので、富士川は医師・医史学者・教育者・哲学者・宗教学者…等々、多様なフィールドで活躍。私は今回、初めてその名と業績を知りました。

●医学書9千冊電子化「解体新書」もネットで 京大付属図書館(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20180513000109
蔵書のデータは無料で閲覧できるだけでなく、ダウンロードや複製・加工、Webサイト掲載もOK。
●京大貴重資料デジタルアーカイブ 富士川文庫
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/collection/fujikawa

試しに検索窓に「張仲景」と入力してみました。日本語読みは「ちょう・ちゅうけい」で、中国では“医聖”と称される後漢時代の医家の名前です。張仲景の有名な著作『傷寒論(しょうかんろん)』の写本の画像が並びました。
その中の1冊をクリックすると奥付のようなデータが現れます。出版年は「康治2年」とありますが、なんて読むの? 中国の元号? いつの時代?

「和暦」とも書いてあるので日本の元号でした~。調べてみると、康治(こうじ)2年とは西暦1143年(12世紀の中頃)、平安時代の後期です。富士川コレクションは最古の物が足利時代らしいので、平安後期に出版された医書を室町時代に写したということでしょう。

富士川は産業医のかたわら医学誌の編集・出版も手掛け、全国各地で古い医書を探し回って収集を続けたとか。それが膨大かつ貴重なコレクションとなり、デジタル化されたお蔭で現代の私たちが簡単に見られるようになったわけですね。
富士川先生、そして電子化に尽力なさった皆さま、誠にありがとうございます~!!
…しかし、悲しいことに古書は漢語なので~、アタシには読めませんのよ~(涙)。

富士川のプロフィールや業績が詳しく紹介されています。
●裳華房の“古書”探訪(19)
富士川游 著 『日本醫學史』 [初版 明治37年]
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1904fujikawa-igakushi.htm

明治時代の医師だから知り合いかも?と思ったら、森 鷗外(もり・おうがい/1862~1922)の書いた『伊沢蘭軒(いざわらんけん)』の文中に「富士川」という名が31か所も見つかりました(読書しながら数えたんじゃないですよ~、「青空文庫」で検索)。
鷗外は史伝を書くにあたり、富士川に蔵書を借りたとのこと。

鷗外(本名:森 林太郎/もり・りんたろう)は石見国(いわみのくに/島根県)の生まれで、現在の東大医学部を経て1884~1889年(22~27歳?)にドイツ留学。
3歳下の富士川は安芸国(あきのくに/広島県)で生まれ、現在の広大医学部を経て1898~1900年(33~35歳?)にドイツ留学。

医学を修めた同世代という共通点だけでなく、鷗外は富士川の古医書に対する探究心や幅広い知見を尊敬し、富士川は軍医の重圧を背負いつつ文筆の才を発揮する鷗外に畏敬の念を抱いていたのではないでしょうか。
それに、鷗外は10~11歳の頃に父と東京へ転居したにもかかわらず、「余ハ 石見人 森林太郎トシテ 死セント欲ス」と遺言するほど故郷を想い続けた人ですから、山陽・山陰という違いはあっても東京では近い地域の出身者として、互いに親しみを感じていたのでは?とも思います(現代ほど共通語が普及していないため、アクセント一つとっても懐かしい感覚では?と想像)。

太古から明治までの日本の医学を初めて体系づけた富士川の大作『日本醫學史(医学史)』の序文は鷗外が書いたそうです。
富士川 游の名と功績は医学界だけでなく、もっともっと世の中に広まり、語り継がれるべきではないでしょうか。NHKの大河ドラマにどう!?

●日本医史学会(順天堂大学医学部医史学研究室内)
http://jsmh.umin.jp/
・『日本医史学雑誌』(1954年~)の目次一覧
http://jsmh.umin.jp/journal.html
見出しを読むだけでネタの宝庫!

日本医学史綱要 1 (東洋文庫)

日本医学史綱要 1 (東洋文庫)

  • 作者: 富士川游
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1974/10/05
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



日本疾病史 (東洋文庫)

日本疾病史 (東洋文庫)

  • 作者: 富士川游
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1969/03/05
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



医術と宗教

医術と宗教

  • 作者: 富士川 游
  • 出版社/メーカー: 書肆心水
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本



森鴎外全集〈7〉伊沢蘭軒 上 (ちくま文庫)

森鴎外全集〈7〉伊沢蘭軒 上 (ちくま文庫)

  • 作者: 森 鴎外
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1996/04/24
  • メディア: 文庫



森鴎外全集〈8〉伊沢蘭軒 下 (ちくま文庫)

森鴎外全集〈8〉伊沢蘭軒 下 (ちくま文庫)

  • 作者: 森 鴎外
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1996/05/23
  • メディア: 文庫



森鴎外の史伝文学の名作―「渋江抽斎」「伊沢蘭軒」他2編 響林社文庫

森鴎外の史伝文学の名作―「渋江抽斎」「伊沢蘭軒」他2編 響林社文庫

  • 出版社/メーカー: 響林社
  • 発売日: 2014/11/23
  • メディア: Kindle版



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