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歌舞伎『南総里見八犬伝』――私の独断・偏見・毒舌たっぷり役者評。 [美術・音楽・古典芸能・芝居...etc.]

1月13日の記事に引き続き、
以下は役者に対する感想などですが、
これから観に行く方はネタバレになるので
お読みにならないほうがいいかもしれませ~ん。

☆・・・★・・・☆・・・★・・・☆・・・★・・・☆・・・★・・・☆

演出も担う菊五郎さんは
「火遁(かとん)の術」を使う犬山道節役がぴったり!
浮世絵の大首絵を超えて
ねぶた絵のようなお顔の大きさ……迫力あるぅ(汗)。
昔は美少年の犬塚信乃を演じていらしたそうですが、
もう往年の体形とは全く変わってしまった今(たびたび失礼!)、
菊之助さんに譲って大正解だと思いました~。

若くきれいだった頃のお父さまに似てきた菊之助さんは、
本当に白塗りが映える顔立ちだなぁと再認識。
もう少しセリフ回しに感情がこもるといいのにな。
それと、大人数の捕り手に追われる立ち回りの場面は
やや長過ぎると思いましたね。
生まれて初めて歌舞伎を観る人には
いかにも様式美らしい場面で面白いかもしれませんけど、
私は途中からダレてしまいました~。

お弟子が多いと、一人でも多く舞台に出してやらねば、
という事情があるのかもしれませんが、観るほうは疲れます。
捕り手は人数を半分にカットして、時間も半減してほしい~。
その延長線上に菊之助さんと松緑さんの
対決シーンもあるのですが、
それが終わった瞬間、
年季の入っている大向こうと思われる野太い掛け声が
「お疲れさんッ!」

思わず私は吹き出し、周りの席からも笑いが漏れましたが
ねぎらい? からかい?(笑)。
きっと大向こうのオジサマも捕り物の場面が長くて
私と同じく途中から退屈していたんだと思うんですよ~。


時蔵さんは犬坂毛野役で、
女装もする知恵者というイメージに近いと思いますし、
どんな所作でも上品で美しいわ~と感服するのですが、
いかんせん、女田楽師のときの衣裳がダサくて
安っぽく見えたので非常にガッカリしました……(泣)。

中国の衣裳をヒントに工夫したとのことですが、
京劇の舞台衣裳のように派手なものならまだしも、
刺繍入りの大きな“よだれ掛け”のような襟に
袖口や前立て、裾にはチープなメイド服みたいに
大仰なフリルがた~っぷり付いていて、
バッタ屋にも吊るしてないような安っぽいドレス。
どこでデザインの方向性が間違ってしまったのか???
と思うほど残念な有り様でございました~。
まぁそういうのを「豪華で素晴らしかった!」
と言う方々もいるんでしょうけどねぇ。
(ひゃ~、時蔵さま、口が悪くて、あいすみませぬ~。涙)

チラシの写真では時蔵さんの衣裳は白拍子風なので、
撮影時には和装で考えていたのでしょう。
そのままで良かったのに~!!
菊之助さんの衣裳もチラシでは錦のようなキラキラですが、
本番では真っ赤でした(こちらのほうは効果的でしたが)。

ちょいと調べてみると、女田楽師の剣の舞の場面は
菊五郎さんが時蔵さんに
「中国の女優チャン・ツィイーが映画で見せた
剣の舞のようにしたい」だなんて、おっしゃったとか。
そんな~、あまりにも、ご無体な~!!!
ホントにもうっ、そんなこと言うから
妙ちきりんなドレスになっちゃったんですよ!


ところで、松緑さんが2役ということで、
これまた期待していたのですが、
左母二郎は教養もある色男のはずなのに、
チンピラにしか見えませんでした。
もしくは、原作から離れてコミカルに演じてもいいかも?

犬飼現八は武術の達人の弟子で捕り物の名人なんですが、
松緑さんのは、やや線が細いかな~と感じました。
もちろん2役は大変だと思いますが、
左母二郎のほうは力が入っていない印象。
また、両役とも型にこだわり過ぎのようにも感じました。
でも、現八が花道でグルグル回る場面では、
軸足がしっかりしていて見事な回転でした。
舞踊に定評のある人だけに型のキレの良さは印象的。

私は子どもの頃にテレビで歌舞伎を観るようになり、
話の内容はわからなくても
ただ眺めているだけで面白かったのですが、
初めて好きになった歌舞伎役者が
現在の松緑さんのお父さまである辰之助さんなんです。
男前で声もよく通って色気もあって
豪快に見えながら繊細な感じも伝わる人。
でも、辰之助さんは肝硬変で40歳という若さで逝ってしまい、
その2年後には先々代の松緑さんも亡くなりました。
今の松緑さんが10代前半の頃です。

師匠として導いてくれるはずの父と祖父を失い、
世襲社会の中で、どれだけ見えない苦労を重ねたか。
だから、松緑さんには
辰之助さんと比較するものではないと思いつつ、
過剰な思い入れをしがちなのかもしれません。

歌舞伎はロクに観ていない私の見方なので、
全くの見当違いだと叱られるかもしれませんけど~、
なんとなく松緑さんは、今より太っていて
目付きもギラギラしていた20代の頃のほうが、
演技は暑苦しかったけれども
断然、情熱と勢いがあった気がするんですよね。
今は、きれいにまとまり過ぎのような感じ。
親代わりの菊五郎家に遠慮があるのかな……。

松緑さんは来月、
辰之助さんの亡くなった年齢に追いつきます。
父の年齢を超えて、これから自分の道を
どう見いだしていくのでしょうか。


ほかの役者陣では、登場時間は短いのですが、
右近さん演ずる伏姫の場は深く印象に残りました。
浜路の梅枝さんも熱演でした。
悪の黒幕・扇谷定正の左團次さんは
立ち姿だけで存在感抜群。キャリアの重みですねぇ。

今回、私が一番良かったと思うのは、
勧善懲悪の物語の中で
正義というものの明るさと爽やかさを体現するような
犬田小文吾の亀三郎さんと
犬川荘助の亀寿さんの坂東兄弟ですね~♪

大向こうの掛け声は、菊五郎劇団だけに
「音羽屋ッ!」が何十回も聞こえました。
たまに「萬屋(よろずや)」と「高島屋」も。
一度だけ、女性の掛け声(オバサン声)もあったのですが、
しっかりセリフにかぶっちゃったので、
「あ~あ、野暮なことするなら
最初から、やめときなさいよ~」と思った次第。
掛け声ってぇのも至難の業(わざ)ですなァ。

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[本日のオマケ]

●「尾上菊五郎・中村時蔵・尾上松緑・尾上菊之助
平成27年初春歌舞伎公演
『通し狂言 南総里見八犬伝』の記者会見を行いました。」
http://www.ntj.jac.go.jp/topics/kokuritsu/26/27120.html

●「歌舞伎への誘い ~歌舞伎鑑賞の手引き~」
(日本芸術文化振興会)
http://www2.ntj.jac.go.jp/unesco/kabuki/jp/

●歌舞伎公式ホームページ「歌舞伎 on the web」
(歌舞伎 on the web事務局/
日本俳優協会&伝統歌舞伎保存会)
http://www.kabuki.ne.jp/

●歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人(かぶきびと)」(松竹)
http://www.kabuki-bito.jp/

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