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膵臓がん闘病を公表していた坂東三津五郎さんが、21日未明に逝去という訃報が…。 [医療・健康&がん関連]

歌舞伎俳優の坂東三津五郎(ばんどう・みつごろう)さん。私などは、いまだに若い頃の名の「八十助(やそすけ)さん」のほうがしっくり来る感じですが、歯切れ良く爽やかな口跡(こうせき)で端正な芝居をする人という印象がありました。

’13年の夏以来、膵臓(すいぞう)がんの闘病を続けていたそうですが、2月21日の午前2時過ぎに亡くなったとのこと。
一部の報道では「急死」という言葉も使われていますが、難治性がんとも言われる膵体部がんで、昨年9月には肺への遠隔転移が見つかっていたそうですから、ご本人も身近な方々も、治療を続けて一縷の望みを抱きながらも
、ある程度の覚悟はなさっていたのではないかと思います。

私の母方の祖父も膵臓がんでした。非常に我慢強く、不調を訴えることがなかった人だそうで、痛みに耐えかねて病院へ行ったときには、すでに末期の状態。60歳で亡くなりました。

その当時に比べれば治療法も何もかも、ずいぶん可能性が広がったとは思いますが、それでも膵臓がんは難しい病気なので、三津五郎さんが最初は「膵腫瘍で入院」と公表したときは、私と同様に、「実際は膵臓がんで、経過も厳しいだろう」と思った人たちも多かったのではないでしょうか。

消化器のがんの中でも膵臓が大変と言われるのは、以下の理由によります。
●おなかの中でも最も背中に近い側にある臓器なので、検査がしにくく、早期発見が難しい。
●症状が出にくく黄疸などの症状が出たときには、がんが進行しているケースが多い。
●腫瘍が2cm以下の大きさでも周りの臓器に浸潤したり、リンパ節・肝臓などに転移したりしやすい。
●ほかのがんに比べて増殖スピードが速く、悪性度が高い。

ネット上で公開されている新聞や週刊誌の記事から、三津五郎さんの闘病の経過と周りの出来事を整理してみました。

●2012年
12月5日 同じ年で幼馴染みの中村勘三郎さんが食道がんで亡くなる(享年57)。

●2013年
2月3日 市川團十郎さんが長年にわたる白血病で逝去(享年66)。
7月 健康診断で膵臓の膵体尾部(すいたい びぶ)に腫瘍が見つかる。
8月 『八月納涼歌舞伎』の公演中に体調不良を訴え、公演の終了した26日に「松竹」を通じ、「膵臓腫瘍の治療のため、『九月大歌舞伎』の舞台は降板」と発表。月末に都内の病院へ入院。
9月3日 膵臓の悪性腫瘍と脾臓(ひぞう)の切除手術(約4時間)を受ける。以後、療養のために休みを取る。

膵臓は肝臓に近い「膵頭部(すいとうぶ)」、膵臓の中央あたりが「膵体部(すいたいぶ)」、胃・大腸・左の腎臓などに近い「膵尾部(すいびぶ)」に分けられます。膵頭部のがんは黄疸が出やすく、膵尾部のがんは黄疸が出にくくて発見も遅れやすいと言われています。

膵臓の背面は腸から肝臓へ血液が流れる太い静脈の「門脈」が半ば埋まっているような状態で、その門脈より左の部分が「膵体尾部」です。

三津五郎さんの受けた手術は以下のいずれかの方法ではないかと思われます。
・膵体尾部切除術:膵臓の門脈から左側の全部を摘出。
・膵尾部切除術:膵臓の左部分のさらに半分ほどの範囲を切除。

脾臓も一緒に切除するのは、膵体尾部の背面に脾臓へ繋がる動脈・静脈が埋まるように走っているため、膵尾部と脾臓を分けて切除するのが難しいからだとか。

膵臓がんは発見されたときに手術できない状態であることが多いと聞きますが、三津五郎さんは手術適応だったわけですよね。がんが見つかった7月の時点で、すぐに手術を受けていたら、もしかすると、その後の経過も少し違ったかもしれないのに…。
でも、がん発見の直後に上演が決まっていた『八月納涼歌舞伎』は、故・中村勘三郎さんと立ち上げた企画だttだけに、自分の病気が理由で中止というのは、どうしても避けたかったのかもしれません。

●2014年
2月 「日本舞踊協会」の公演に出演。
3月 会見で「酒や煙草は断ち、毎朝ラジオ体操」という生活の変化や、「セブ島でシュノーケリング」「沖縄でゴルフ」など療養生活について語った。肌が浅黒くなったことについては「抗がん剤のせい。ゴルフ焼けやセブ島焼けもあるかな」と答えた。
4月 「歌舞伎座」新開場1周年記念公演『鳳凰祭四月大歌舞伎』昼の部の演目『壽靱猿(ことぶき うつぼざる』で約7か月ぶりに歌舞伎の舞台へ復帰。「5月から新たな治療のため再び休みに入る」「まだいろいろな治療がある」「今は仕事より体を治すことが最優先」「8月の舞台出演を目指す」などとコメント。
7月 ゴルフコンペ主催(ゴルフ合宿は恒例だそうで、三津五郎さんを『お兄ちゃん』と慕う、いとこの女優・池上季実子さんも参加)。
8月 「歌舞伎座」公演『たぬき』で柏屋金兵衛・『勢獅子』で鳶頭を演じ、テレビドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)にも出演。
9月 日本舞踊の坂東流家元として九州などで舞踊講習。20日に舞踊会に出演。27日に、12月に予定していた「こまつ座」公演の主演舞台『芭蕉通夜舟』の降板を発表。
10月13日 8月末に亡くなった俳優・米倉斉加年(まさかね)さんの「お別れの会」に参列。27日に「国立劇場 小劇場」での田村会「小唄演奏会」の『田村』『髪結新三』に出演。
11月 お城の番組のロケで滋賀県や愛媛県へ。

昨年9月の時点では、「検査の結果、がんの再発・転移はないが、医師から加療の必要があると診断された」と説明したそうですが、実際には定期検診で肺への転移が見つかっていたようです。5月から受けたらしい「新たな治療」「いろいろな治療」が、どのような内容だったのかが気になります……。

●2015年
1月22日 日本の城に関するインタビューを受ける。23日に59歳の誕生日を迎える。月末にインフルエンザに感染、肺炎も併発し、都内の病院に緊急入院。
2月6日 一時外出の許可をもらい、都内での「日本舞踊 坂東流」の名取試験に立ち会う。
2月7日 NHK BSプレミアム「美の壺」(27日放送)のインタビュー収録を自宅で行った。
2月17日 容体が急変したが、その後は安定した状態を保つ。
2月19日 池上季実子さんが見舞い、「じゃあね、またね」と手を握って挨拶。
2月21日02:03 妹や息子・娘ら家族が見守る中、息を引き取った。前日(数時間前)まで意識があったという。

勘三郎さんの弔辞を読んだときの三津五郎さんの言葉
「肉体の芸術って、つらいねぇ。そのすべてが消えちゃうんだもの」

[放映予定]
2月27日(金)19:30~20:00
NHK BSプレミアム『美の壺――粋を持ち歩く、印伝』
三津五郎さんは鹿皮の工芸品「印伝(いんでん)」を使った江戸小物の魅力についてインタビューを受けたそうです。
案内役:草刈正雄、語り:木村多江
(草刈正雄さんも先日、息子さんが事故死したばかりですね…)

坂東三津五郎さん オフィシャルサイト
●「十代目 坂東三津五郎」
http://www.kabuki.ne.jp/mitsugoro/

池上季実子さん オフィシャルブログ
●「お兄ちゃん 十代目坂東三津五郎」
http://ameblo.jp/ikegami-kimiko/entry-11993442621.html

[参考サイト]

私のがん本の取材に協力していただいた膵臓がんの“がん友”Gさんは、当時67歳だった’08年11月にステージⅢのがんが見つかり、3か月後には肝臓への転移も判明しました。いったんは余命数か月と言われたそうですが、抗がん剤・免疫療法・代替療法などを続けた結果、昨年には肝臓の転移がんが消失したとか……。
73歳の今も治療は継続しつつ、病状は安定しているそうです。ただし、たいへん高額となった医療費はほとんど自費のようです。

膵臓の切除術がイラスト入りでわかりやすいページ。
●「膵臓の病気 膵腫瘍」(日本消化器外科学会)
http://www.jsgs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=17

●「膵癌」(神戸大学医学附属病院 肝胆膵外科)
http://www.med.kobe-u.ac.jp/hbps/shinryou/suig.html

●「がんの種類と診療科 膵臓がん(消化器科・外科)」(大阪医療センター)
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/suizos.html

●「『腹腔鏡下膵体尾部切除術または核出術』についての説明」(東北大学病院 肝胆膵外科)
http://www.surg1.med.tohoku.ac.jp/patient/disease/h-10.html#TOP

三津五郎さんの化学療法に使われた薬物名はわかりませんが、これまで膵臓がんの治療に使われてきたのは
以下のような抗がん剤です。

●「商品名:ジェムザール/一般名:ゲムシタビン・ジェムシタビン」
https://www.lilly.co.jp/lillyanswers/data/patient/GEM-A-P067%28R1%29.pdf
●「商品名:タルセバ/一般名:エルロチニブ」
http://chugai-pharm.jp/hc/ss/pa/sf/tar/index.html
●「TS-1(ティーエスワン)」
http://ts-1.taiho.co.jp/

’13年末に「治癒切除不能な膵癌」を対象として、「FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法」に使用するオキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウムの併用が新たに承認されました。
この療法はゲムシタビン単剤の治療と比べ、奏効率・全生存期間で大きく上回ったとされていますが、強い副作用が確実に出るとも言われています。

●「FOLFIRINOX療法(治癒切除不能な膵癌) 適正使用情報」(監修:日本膵臓学会)
https://www.medicallibrary-dsc.info/safety/topotecin/folfirinox/pdf/TOP7AT1601.pdf

●「FOLFIRINOX 療法を受けられる患者さんへ」(監修:国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科・薬剤部・看護部/2014.01作成)
http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/pdf/FOLFILNOX.pdf

「大塚北口診療所」の梅澤先生は、この療法に対して否定的でブログで警告を発しています。
●「現在のガン治療の功罪 ~抗ガン剤治療と免疫治療~ 地獄への案内人FOLFIRINOX」
http://umezawa.blog44.fc2.com/blog-entry-2909.html

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