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沖縄事件03:本土・アメリカ・沖縄の心の温度差。 [沖縄&琉球國]

沖縄の米軍基地.png20歳という若さで米軍の軍属に惨殺された女性Rさんの事件について、日本政府、アメリカ、沖縄県それぞれの対応と関係者の言葉を知るにつけ、気温の差よりも遥かに隔たっている心の温度差があると感じました。

[日本政府の対応とコメント]

●岸田外相
「(ケネディ米大使など)アメリカに抗議するとともに再発防止策を求めた。さまざまなレベルや機会を通じて、アメリカ側に、できるだけ速やかに、沖縄県民の心に寄り添った誠意ある対応を求めていきたい」
「戦後70年以上を経た今でも沖縄が大きな負担を負っている現状は、認められるものではない。政府の責任で今後も負担軽減に全力で取り組んでいかなければならない」

●中谷防衛相
「(ニコルソン四軍調整官に対し)言語道断で抗議する。綱紀粛正に努め、実効性のある具体的な再発防止策の徹底をお願いする」
「(カーター国防長官に電話で)軍属の卑劣な行為による極めて残忍で凶悪な事件の発生は言語道断であり、極めて遺憾だ。強く抗議するとともに、綱紀粛正と再発防止の徹底を強く求める」
「二度とこのようなことが発生しないように厳しく対応し、具体的で説得力のある対応をしてもらわなければならない。なんと言ってもアメリカ側の努力が第一なので、さらに働きかけをしていく」
「(米軍の軍人などには)今までも外出時間の制限などの措置が取られてきたが、一人一人の意識、心がけがいちばん大事なので、さらにしっかり管理・監督していただくよう申し入れている」

●安倍首相
容疑者逮捕の19日に記者団から問い掛けられても無言で、翌20日になってからコメント。
「非常に強い憤りを覚える。さぞ無念だったと思う。今後、徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」
G7(伊勢志摩サミット)の際に予定している日米首脳会談で、この事件を取り上げ、オバマ大統領に「非常に遺憾だ」と伝え、再発防止を求める方針。

●菅 官房長官
「米軍属の残忍で凶悪な事件の発生は許し難く、言語道断」
「政府としても、ありとあらゆる機会を通じて米側に対応を求めたい」

●島尻 沖縄北方担当相(沖縄県選出)
「繰り返される事件・事故に憤りを感じる」
「あってはならない事件が再び起き、強い憤りを感じている。言葉にならないというか、私自身、気持ちの整理がつかないくらい極めて遺憾だ。アメリカ側に対し、綱紀粛正と再発防止を強く求めていく」

●河野国家公安委員長
「極めて痛ましい事件であり、警察としては全容の解明に向けてしっかりと捜査をしていきたい」
「このような事件は沖縄に限らず、全国どこでもあってはならないことなので、警察としてもしっかり日頃の治安の維持に努めていきたい」

……もっともらしい文言が並んでいるように見えますが、“閣僚用語”って、ほとんど決まっているんですよね。マニュアルがあって、そこに登録してある用字用語を組み合わせながら話すだけのように私には思えます。

[例]
非常に遺憾、極めて遺憾、強い憤り、非常に強い憤り、言語道断
できるだけ速やかに、早急に
負担軽減、誠意ある対応、実効性のある対策、厳しく対応、厳正な対応
再発防止の徹底、二度と発生しないように
しっかり管理・監督、綱紀粛正に努める、全力で取り組む

……ほらね、上記の言葉を適当に組み合わせれば、政府の公式見解の出来上がり~!
こんなふうに作られるフレーズが沖縄の人々に、また、広く国民の心に響くとは全く思えません。
政治家の多くは四字熟語とか故事成語をよく使いますが、漢字が多いと偉く見えると思っているのかな?(笑)。「綱紀粛正」の本来の意味を知る政治家は何人いるのでしょう? 他者を追及するために使えば使うほど、自分に還ってくる恐ろしい言葉ですよ。

[綱紀粛正(こうき しゅくせい)]
国家の規律や秩序、政治のあり方、政治家・役人の態度を正すこと。


[アメリカの対応とコメント]

●ケネディ米大使
「深い悲しみを表明する」

●ドーラン在日米軍司令官
「(容疑者は)現役の米軍人ではない」「国防総省の所属ではない」「米軍が雇用していた人物ではなく、民間会社の請負人だ」

……というふうに、当初は米軍との関係性は薄いと強調しようとしたので、沖縄県の安慶田(あげだ)副知事が「そういうことばかり言うなら(謝罪のために)県庁には来なくて構わない」と突っぱねたところ、司令官の発言が変わりました。

「痛ましく、たいへん寂しく思う」
(※全国紙の記事からの引用ですが、この「寂しい」は「miss」の誤訳ででしょうか? 「miss」だとしたら「悲しい」「残念だ」「遺憾に思う」という意味もあります)

●ローレンス・ニコルソン四軍調整官(在沖米軍のトップ)
「米国を代表し、遺憾の意を伝え、被害者のご冥福を祈る。県警の捜査に全面的に協力している。米軍や米政府が雇用しているわけではないが、日米地位協定が適用される人物だ。事件はすべて私の責任だ」
「米国政府を代表して謝罪する。非常に恥じている。軍人・軍属、すべての米国人が善良な市民として法を順守するよう努めていく」

●アメリカのカーター国防長官
「大変痛ましく遺憾な事件だ。捜査に全面協力する」
「亡くなられた被害者、ご遺族に心から謝罪の意を表明する」

……ニコルソン調整官が直角に腰を曲げて頭を下げる写真が出ていました。「すべて私の責任」という発言も、潔いと感じた人がいるでしょう。どちらの言動も日本人をよく観察・分析してあるんだなと思いました。コントロールしやすいってことね?

国防長官の使う単語が「遺憾(regret)」から「謝罪(apology)」に替わったことで、マスコミは「極めて異例」と報道していますが、大統領の“歴史的な訪問”を完遂させて有終の美を飾るサポートをするためと、今回の事件が沖縄の基地問題まで波及しないよう一区切りするために、「謝罪」という語を持ち出したのでしょう。充分に計算した上での単語の選び方。


[沖縄県の対応とコメント]

●翁長雄志(おなが・たけし)県知事
「基地と隣り合わせの生活を余儀なくされている県民に大きな衝撃と不安を与えるもので、断じて許されるものではない。将来に大きな夢を抱いて地道に努力している若者の命が奪われたことは痛ましく、本人や遺族のことを思うと本当に心が痛む。繰り返し、綱紀粛正、再発防止を強く要請してきたが、またもや事件が発生したことに対し、激しい怒りを禁じえない」
「こういう事件が起きると、県民は夜の道を歩けないことになる。県内レベルの抗議では済まない」
「基地があるがゆえの事件が起きてしまったことは、県民の命と財産、子や孫の幸せを願う沖縄の知事として大変残念だ。県民は、この悲しい現実を受けて過去に起きた事件・事故を振り返り、怒りの持って行き場がないと感じていると思う。痛恨の極み」
「日本国が本当の当事者として沖縄県の基地被害に対応できないというのは、県民がよく知っている」
「この70年間、基地のある市町村長は訴えているが、政府は当事者能力がなく、ただ米軍に伝えるだけで今日(こんにち)まで来ている。本当に憤懣(ふんまん)やる方ない形で抗議しているが、今日まで残念ながら聞く耳を持たなかった。今回も多くの関係者が抗議するが、今のままではいけないということに繋げていかなければならない」
「基地問題を考えたときに、いちばん大きいのは日米地位協定の改定だ。いちばん厚い壁だが、日米両政府に強く申し上げたい」

●安慶田 光男(あげだ・みつお)副知事
「被害者は20歳の溌剌(はつらつ)とした時期に事件に巻き込まれた。家族の心情を考えると居たたまれない。許されるものではない」
「(米軍には)数え切れないほど県民の生活を脅(おびや)かしていることを充分に認識してもらいたい」
「このような非人間的な事件が発生したことは、沖縄が基地と隣り合わせの生活をしないといけないことが大きな原因だ。被疑者が軍人であれ軍属であれ民間人であれ、事件は基地があるゆえに発生した。米軍施設が沖縄に、あまりに集中している」
「沖縄県は普通の日本国なのかという疑問も出てくる」

●島袋俊夫(しまぶく・としお)うるま市長
「うるま市に魅力を感じて来てもらった若い、将来のある女性だったが、最悪の結果になってしまった。家族や知人、関係者の気持ちを考えると大変忍びない」
「(これまでも米軍関係の事件発生後、再発防止の徹底を政府に求めてきたのに)こういった事件が、いつまでも続くことが異常だ」
「心から安心して住める町づくりが行政の務めであり、国の務めでもある。(日本政府に)安全、安心な町づくりの確保を強く求めたい」

●稲嶺 進(いなみね・すすむ)名護市長
「女性の命が虫けらのように扱われた」
「とても許せるものではない。米軍関係者は綱紀粛正とか二度とないようにとか言うが、結局なくなっていない」

●山内県議(うるま市選出)
「あまりにひどい事件で言葉にならない。沖縄の人なら誰でも怒りを覚える」

●新里県議
「基地問題を解決するには、基地を減らしていくしかない」

●市民団体「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」高里鈴代 共同代表
「怒りが痛みをもって湧き上がるのを抑えることができない。沖縄に暮らす私たちは皆、自分にも起こり得たことだと言葉を失い、痛み苦しみを共にしている。真に安全な社会を実現するため、沖縄からすべての基地・軍隊の撤退を求める」
「(1995年に12歳の女子児童が米兵3人に暴行された事件から)20年、本当に変わっていない。このようなことが起こり続けて20年ですよ。もう嫌になります。なぜこういうことを言い続けなければいけないのか」
「米軍基地がある限り、このような事件は繰り返される。沖縄の女性や子どもの命を守るためには基地の即時撤退しかない」

沖縄県の政治家は今回の事件に対し、所属政党や推薦を受けた政党を超えて、県民としての激しい怒りと重苦しい悲痛を訴えています。
以前から沖縄では米軍関係者の犯罪が横行していたという事実だけでなく、歴史をさかのぼれば、アメリカに占領されていた時期の屈辱、大戦の末期にヤマト(本土)に見捨てられて県民20万人(4人に1人)が虐殺された怒りと苦痛、それ以前にも独立していた王国・琉球が日本によって滅ぼされ、差別を受け続けてきたという苛酷な記憶……。

考えるほど、息が詰まるように胸が重苦しく、痛みも感じますが、今の私に何ができるのかを模索し続けるしかない。

Rさんの事件によって、「基地がなければ容疑者も沖縄にいなかっただろうし、被害者がひどい目に遭うこともなかったはず」という意見が、前にも増して多くなりました。

全国にある米軍施設・区域の全体面積のうち、沖縄の施設・区域の割合は2014年の時点で73.8%でしたが、安倍首相の「沖縄の負担軽減」という言葉は全く守られず、今年初めの統計では74.46%と負担が増大しているのです。

●在日米軍施設・区域(専用施設)面積
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetumennseki.html
(防衛省/平成28年1月1日現在)


※画像:沖縄県の米軍基地(File:US military bases in Okinawa.svg/From Wikimedia Commons, the free media repository/出典:ウィキメディア・コモンズ)

[このブログ内の関連記事]
●沖縄事件01:やっぱり米軍関係者か…という無念。
http://chie-relish.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
●沖縄事件02:「犯人を自分の手で殺してやりたい」という母の言葉。
http://chie-relish.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23

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