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沖縄事件07:県民大会に何人が集まったという数字が重要? [沖縄&琉球國]

那覇市の位置.png沖縄で生まれ育った20歳の女性が、海兵隊員だった米軍属の男に暴行・殺害された事件。この事件への抗議と共に被害者Rさんを追悼する県民大会が、6月19日(日)に那覇市の「奥武山(おうのやま)公園 陸上競技場」で行われました。この日はRさんの四十九日にあたるそうです。

新聞各紙の当日の報道をササッと確認してみました(たくさんの媒体を素早く横断的にチェックできるのはネットの利点ですね)。
どの新聞も「怒りは限界を超えた」「海兵隊は撤退を」という文字の書かれた紙を掲げる大群衆の写真を掲載しています(※ネット新聞「The Huffington Post/ハフィントン・ポスト」だけは、なぜか17日に名護市のキャンプ・シュワブ前で行われた集会の写真を使用。キャプション=写真の説明文=を読まないとわからないので紛らわしい)。

大会では開始まもなくRさんの死を悼んで黙禱を捧げ、お父さんのメッセージが代読されました。

●被害女性Rさんのお父さんが弁護士を通して寄せたメッセージの全文
「ご来場の皆さまへ。米軍人・軍属による事件、事故が多い中、私の娘も被害者の一人となりました。なぜ娘なのか、なぜ殺されなければならなかったのか。
今まで被害に遭った遺族の思いも同じだと思います。被害者の無念は、計り知れない悲しみ、苦しみ、怒りとなっていくのです。それでも、遺族は、安らかに成仏してくれることだけを願っているのです。
次の被害者を出さないためにも全基地撤去。辺野古新基地建設に反対。県民が一つになれば可能だと思っています。県民、名護市民として強く願っています。ご来場の皆さまには、心より感謝申し上げます。
平成28年6月19日 娘の父より」

実際の紙の媒体はわかりませんが、ネットで全文を掲載したのは「琉球新報」「沖縄タイムス」に、この2紙と対峙する「産経新聞」だけのようです。大会の正式なタイトルも載せたのは前述の3紙で、以下のように長いものでした。
「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」

ほかの記事は新聞各社の思想や主張をベースに、微妙に違ったり大きく異なったり。大会の主催者の名称も、私は単純に「オール沖縄」と覚えていたのですが、正式名称は「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」だそうです。この団体については以下のように説明されていました。

●翁長雄志(おなが・たけし)知事を支える県政与党会派や企業、団体でつくる「オール沖縄会議」(毎日新聞)
●共産党や社民党、労働組合などでつくる「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」(産経新聞)
●翁長雄志知事を支持するグループ「オール沖縄会議」。沖縄県議会与党会派の社民党、共産党、地域政党の沖縄社会大衆党、市民グループなどが参加(The Huffington Post/ハフィントン・ポスト)

大会のタイトルに「海兵隊の撤退」が入っているし、主催者が与党系(沖縄県では自民は野党)と明確なので、今回の大会には自民・公明の議員や支持者が反発して参加しなかったそうです。県内11市のうち9市長も参加を見送り、県政で中立会派の公明は大会前日の18日に独自の追悼集会を開いたとか。

批判サイドの主張は「大会の開催日は参院選公示を3日後に控える時期で、事件を政治に利用している」「『オール沖縄』は県民の総意とは思えない」などというもの。
特定の支持政党のない県民の中にも、「凶悪な事件に悔しさを覚える。自分の娘だったらと思うと恐ろしい」と思いつつ、超党派での開催ではないし、特定の立場で政治的な主張を発信する場となっているから大会には参加しなかったという人も。

どこの政党だとかは関係なく、事件に対して怒り悲しみ、被害者を悼む気持ちは皆、同じだと思います。それは沖縄県民だけでなく、日本に住むたくさんの人々や良心をもつアメリカ人も、ほかの国の多くの人たちも…。

しかしながら、戦時中に沖縄へ米軍が上陸して以来、1995年に小学6年生の女子児童が乱暴・殺害された事件までの間も女性に対する強姦・惨殺が続きました。
●米兵による戦後沖縄の女性犯罪
http://www.jca.apc.org/~uratchan/gbmarines/henji/jyoseinohigai.html
(沖縄の女性グループ「基地軍隊を許さない行動する女たち」)

現在に至るまで事件は後を絶たないからこそ、追悼だけの集会では終わらせられないと思った人が多かったのでしょう。

大会では「オール沖縄会議」共同代表で学生団体「SEALDs RYUKYU(シールズ琉球)」のメンバーでもある名桜大4年の玉城 愛(たまき・あい)さんも、涙ながらにスピーチで訴えたそうです。特に心に残った部分を「琉球新報」の記事から抜粋します。

「安倍晋三さん。日本本土にお住まいのみなさん。今回の事件の『第二の加害者』は、あなたたちです。しっかり、沖縄に向き合っていただけませんか。いつまで私たち沖縄県民は、ばかにされるのでしょうか。パトカーを増やして護身術を学べば、私たちの命は安全になるのか。ばかにしないでください。
軍隊の本質は人間の命を奪うことだと、大学で学びました。再発防止や綱紀粛正などという使い古された幼稚で安易な提案は意味を持たず、軍隊の本質から目をそらす貧相なもので、何の意味もありません。
バラク・オバマさん。アメリカから日本を解放してください。そうでなければ、沖縄に自由とか民主主義が存在しないのです。私たちは奴隷ではない。あなたや米国市民と同じ人間です。オバマさん、米国に住む市民のみなさん、被害者とウチナーンチュ(沖縄の人)に真剣に向き合い、謝ってください。」

以上を含めたスピーチの全文(「琉球新報」)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-301239.html

胸が痛む限りで、確かに正論だと思います。ただし、本土の住民を安倍首相と並べて「第二の加害者」と指摘したり、オバマ大統領と並べて米国市民にも謝罪を求めたりという部分に対しては、「そうだよね、我々の責任だよね」と受け止める人もいる半面、これまで共感と同情の念を抱いていた人の気持ちがトーンダウンすることもありうるのではないでしょうか。

そこまで厳しい言葉を使わせた責任こそ、本土の住民やアメリカ市民にあるのだという意見も正しいと思います。それでも、沖縄が孤立しないためにも、もう少し表現に配慮したほうが良かったのではないか…という気もするんですよね。
この女性は非常に純粋で正義感にあふれる人なんだと思います。それを知った上で、やや過激な表現を使うよう、あえてたきつける老獪な大人たちがいる気がしてなりません。

という違和感を覚えながらも、音楽家の坂本龍一さんが大会に寄せたメッセージに共感する自分もいるわけです。

●坂本龍一さんのメッセージ
沖縄だけに痛み、苦痛と侮辱を何十年もおしつけておくべきではない。
もうたくさんだ。
基地、米軍、武力が必要なら日本人の全てが等しく背負うべきだ。

私としてはグズグズと考え込むことしかできないのですが…。

ところで、いくつかの新聞の見出しには県民大会に約6万5000人が集まったと出ていましたが、デモなどの集まりでも、それは主催者の発表で実際は半分ぐらいだったという反証記事もよく出ますよね。
今回も「産経新聞」が試算したそうで、鬼の首でも取ったかのように「参加者は多くても3万人前後だった」と、試算の方法も事細かく嬉々として(と感じましたが)説明していました。
私は6万だろうが3万だろうが、抗議と追悼に県民が集結したこと自体が重要な事実だと思うんですよ。数字をあげつらうことに紙面を割くのは意義があるのか? 私は「産経新聞」の思想に共鳴することはありませんが、記事によっては他の新聞より公平・丁寧に書くときもある新聞だと思うので、せっかくのジャーナリズム精神をピントのズレた方向へ発揮しなくてもいいのにな~とも思った次第です。

[参考サイト]

●毎日新聞
沖縄県民大会「海兵隊撤退を」女性殺害に抗議
http://mainichi.jp/articles/20160619/k00/00e/040/155000c
●産経新聞
沖縄県民大会「事件を政治利用するな」…事件への怒りは当然、ただ「オール沖縄」には“違和感”も
http://www.sankei.com/west/news/160619/wst1606190044-n1.html
●日経新聞
「次の被害者出すな」 米軍属事件で沖縄県民大会
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG19H2M_Z10C16A6CC1000/
●琉球新報
沖縄県民大会、6万5千人が追悼 海兵隊の撤退求める 被害者の父がメッセージ
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-300866.html
●時事通信
国会前でも抗議集会=沖縄県民大会に合わせ
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016061900152&g=soc
●読売新聞
女性殺害に抗議「県民大会」…自公は参加見送り
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160619-OYT1T50055.html?from=ytop_ylist
●沖縄タイムス
沖縄県民大会、6万5千人が追悼 海兵隊の撤退要求
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=174090
●朝日新聞
元米兵事件に抗議、県民大会に6万5千人 主催者発表
http://www.asahi.com/articles/ASJ6L7JNBJ6LTIPE027.html
●共同通信
沖縄、抗議の「県民大会」米海兵隊撤退を決議
http://this.kiji.is/117170492748400121
「沖縄県民の声を聞け」 京都で500人連帯デモ
http://this.kiji.is/117255916197396487
●日刊スポーツ(共同通信の配信)
本土国民も第二の加害者! 沖縄県民大会で涙の訴え
http://www.nikkansports.com/general/news/1665849.html
●The Huffington Post(ハフィントン・ポスト)
沖縄女性殺害事件に抗議する県民大会に6万5000人が集まる「加害者はあなたたちです」
http://www.huffingtonpost.jp/2016/06/18/okinawa_n_10553050.html

※沖縄県那覇市位置図:ファイル:基礎自治体位置図 47201.svg 出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)/投稿者:Lincun

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